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COLUMN / 保険募集人という仕事の構造

売れない保険募集人は、
本当に能力が劣っているのか

結論から、率直に申し上げます。売れない保険募集人の多くは、能力が劣っているのではありません。お客様に信頼される力(顧客対応力)と、見込み客を自分で創り続ける力(個人マーケティング力)は、まったく別の能力です。そして後者は、ほとんど誰も教えてくれません。3年で8割が辞めると言われる業界で、私が25年見てきた「売れない」の正体と、立て直しの方向を、できるだけ正直にお話しします。

執筆:春野高利(保険業界25年) 公開:2026年5月30日 所要:約14分
FOR WHOM / この記事の対象
この記事は、次のような方に向けて書いています
CONTENTS / 目次
  1. 「売れない=能力が低い」という誤解
  2. 同じ人が、環境を変えただけで成功した話
  3. 離職率8割は「個人の問題」では説明できない
  4. 顧客対応力と、見込み客を作る力は別物
  5. 私自身が、どう抜け出したか
  6. 能力を、環境のせいで埋もれさせないために — Llinks
  7. よくある質問(FAQ)

CHAPTER 01「売れない=能力が低い」という誤解

保険業界には、根強い思い込みがあります。「売れないのは、その人の能力が低いからだ」というものです。けれど、25年この業界を見てきて、私はこの考え方は本質を見誤っていると感じています。

もちろん、努力もスキルも大切です。しかし、お客様に信頼され、満足してもらう「顧客対応力」が高い人でも、売れずに苦しむことは普通にあります。なぜか。それは、目の前のお客様に対応する力と、そもそも会うべきお客様(見込み客)を自分で生み出し続ける力が、まったく別物だからです。

裏を返せば、こういうことです。多くの「売れない」は、人格や努力の問題ではなく、「見込み客を自分で創り続ける手段を、誰からも教わっていない」という一点から生まれています。

CHAPTER 02同じ人が、環境を変えただけで成功した話

この話をすると、いつも一人の同期の顔が浮かびます。仮にNさんとします。34歳で別業界から保険の世界に飛び込んできた方で、人柄が本当に優しく、お客様からも好かれ、信頼されていました。「人として信頼される力」は、明らかに高かったのです。

それでも、新人時代のNさんは数字に苦しみました。経済的な事情もあり、やがて別の業態(来店型の代理店)へ移っていきました。——ここで終われば「向いていなかった」で片づく話です。けれど、続きがあります。

数年後の再会
数年後、私はある業界のカンファレンスでNさんと再会しました。彼は、移った先の会社で幹部として活躍していました。人は何も変わっていません。変わったのは、「見込み客が自然に来店する」仕組みを持つ環境に身を置いたこと。それだけで、同じ人が"売れない人"から"成功者"へと変わったのです。

この一件は、私の確信を決定づけました。問題は能力ではなく、環境とマーケティングの手法である、と。

CHAPTER 03離職率8割は「個人の問題」では説明できない

保険営業の3年以内離職率は、8割ほどと言われます。冷静に考えてみてください。8割もの人が辞めていく現象を、「たまたま能力の低い人ばかりが集まった」で説明できるでしょうか。これは明らかに、個人ではなく構造の問題です。

教わるのは「知人を当たる」ところまで

多くの研修で教わるのは、身内・親戚・友人をリストアップして当たっていく人脈営業(いわゆる「プロジェクト100」のような手法)が中心です。これ自体は出発点として悪くありません。問題は、その知人マーケットが尽きたあと、見込み客をどう創り続けるか——そこを、ほとんど誰も教えてくれないことです。

身内や友人に売ることすらできずに去る人もいますが、それすら「マシ」なほうで、多くは知人を一巡したあとに面談相手が枯れ、数字が止まり、給与体系の都合で辞めざるを得なくなります。担当者が悪いわけではありません。そうせざるを得ない環境と仕組みが、そうさせてしまうのです。

お客様にも影響する「孤児契約」
募集人が短期間で辞めていく構造は、お客様側にも影を落とします。担当者が数年でいなくなり、フォローする人を失った契約を、業界では「孤児契約」と呼びます。見直しや手続きの相談相手がいなくなる——これは、お客様にとっての不利益でもあります。継続的につながり続ける仕組みは、募集人のためだけでなく、お客様の安心のためにも必要なのです。

辞めていく人ほど、この仕事が好きだった

そして、これは私の実感ですが、辞めていった方々の多くは、この仕事が好きだと言って去っていきました。責任感が強く、お客様への姿勢も真摯だった。だからこそ、見込み客を創り続ける手段を持てないまま数字に追い詰められると、辞めるという決断に至ってしまう。向き不向きの話に矮小化してはいけない、と私は思っています。

CHAPTER 04顧客対応力と、見込み客を作る力は別物

ここまでの話を、一枚の図に整理します。保険募集人に求められる力は、大きく2つに分かれます。

図|保険募集人に必要な「2つの別々の力」
多くの人が持っている
顧客対応力
目の前のお客様に信頼され、丁寧に提案し、満足していただく力。研修や経験で磨かれやすい。
誰も教えてくれない
見込み客を作る力
まだ会っていない人に存在を知らせ、関心を持ってもらい、相談につなげる力。=個人マーケティング力。
「売れない」の多くは、右側(見込み客を作る力)が手薄なまま、左側だけで戦おうとしている状態です。

中小の保険代理店の経営者の方々と話していても、同じことを感じます。お客様に対する「在り方」は、本当に素晴らしい。志があり、丁寧で、信頼されている。けれど、その良さを継続的な集客につなげるマーケティングの部分で苦労しておられる。これも、能力の差ではなく、構造と手段の問題です。

つまり、伸ばすべきは「人としての魅力」ではありません(それはすでにある)。足りないのは、その魅力を見込み客に届け、関係を保ち続ける"仕組み"のほうなのです。

CHAPTER 05私自身が、どう抜け出したか

偉そうに書いていますが、私自身、駆け出しのころは典型的な「売れない募集人」でした。知人を一巡して数字が止まり、追いかけても追いかけても楽にならない。正直、辞めることも頭をよぎりました。

転機は、「見込み客を自分で創る」という発想に出会えたことでした。ソニー生命時代はメールマーケティングに出会い、会わずに信頼を積んで相談が来る状態をつくれた。その後の保険代理店経営では、WEBマーケティングを軸に、規模では敵わないはずの環境の中でも戦うことができました。手法は時代とともに変わりますが、「自分で見込み客を創り、関係を保ち続ける」という原理は、ずっと同じです。

この経験があるからこそ、いま私は「ミエルカ(見える化)」と「ツナガリ(つながり続ける)」をテーマにサービスをつくっています。能力のある人が、環境のせいで埋もれてしまわないように。お客様が、担当者を失って不安にならないように。格好よくはありませんし、青臭いかもしれません。でも、ここが保険業界の根っこの課題だと、本気で思っています。

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よくある質問(FAQ)

Q. 売れない保険募集人は、能力が劣っているのですか?
多くの場合、能力の問題ではありません。お客様への対応力(顧客対応力)と、新規の見込み客を継続的に創り出す力(個人マーケティング力)は、まったく別の能力です。前者が優れていても、後者を誰からも教わっていなければ、面談する相手がいなくなり数字が止まります。実際、同じ人が環境を変えただけで成功するケースは珍しくありません。売れない原因の多くは、人格や努力ではなく、見込み客を自分で創り続ける仕組みを持てていないという構造にあります。
Q. 3年で8割が辞めると言われるのはなぜですか?
保険営業の3年以内離職率は8割ほどと言われますが、これは個々人の能力では説明がつかない数字です。多くの研修で教わるのは、身内・知人をリストアップして当たる人脈営業(いわゆるプロジェクト100など)が中心で、知人マーケットが尽きたあとに見込み客を継続的に創り出す方法は、ほとんど教わりません。結果として、能力のある人でも面談相手が枯れて数字が止まり、環境や給与体系の都合で辞めざるを得なくなる——構造的な問題です。
Q. 顧客対応力と見込み客を作る力は、どう違うのですか?
顧客対応力は、目の前のお客様に信頼され、丁寧に提案し、満足していただく力です。一方、見込み客を作る力(個人マーケティング力)は、まだ会っていない人に自分の存在を知らせ、関心を持ってもらい、相談につなげる力です。前者が高くても後者がなければ、面談する相手そのものがいなくなります。多くの募集人がつまずくのは後者で、しかもこれは研修で体系的に教わる機会が少ないのが実情です。
Q. 「孤児契約」とは何ですか?お客様にどんな影響がありますか?
孤児契約とは、担当者が退職などでいなくなり、フォローする人がいなくなった契約のことです。募集人が短期間で辞めていく構造は、お客様側にも影響します。数年で担当者がいなくなり、見直しや手続きの相談相手を失ってしまうのです。これは募集人個人の責任というより、見込み客を創り続けられず辞めざるを得ない業界構造の副作用でもあります。継続的に顧客とつながり続ける仕組みは、お客様の安心のためにも重要です。
Q. 辞めていく人は、この仕事に向いていなかったのですか?
そうとは限りません。むしろ、この仕事が好きで、お客様への姿勢も素晴らしいのに、見込み客を創り続ける手段を持てずに去っていく方を、私は数多く見てきました。担当者が悪いわけではなく、そうせざるを得ない環境や給与体系がそうさせてしまうのです。向き不向きの問題に矮小化せず、見込み客を自分で創り、関係を保ち続ける仕組みを持てるかどうかで考えるべきだと、私は思っています。
Q. 中小代理店は、大手代理店に勝てないのですか?
規模では分が悪く見えても、勝負どころは別にあります。中小代理店の経営者の多くは、お客様に対する『在り方』が素晴らしく、丁寧な対応で信頼を得ています。課題は、その良さを継続的な集客・見込み客創造につなげるマーケティングの部分です。逆に言えば、自前で見込み客を獲得・育成する仕組みを持てれば、規模に頼らずに戦えます。改正保険業法2026で会社頼みの集客が細るいまこそ、その自走の力が効いてきます。
Q. 見込み客を自分で作れるようになるには、何から始めればいいですか?
まず、顧客対応力と見込み客創造力は別物だと認識することが出発点です。そのうえで、SNSやLINEなど、続けるほど自分の資産として積み上がる『ストック型』の接点づくりを少しずつ始めること。そして、出会った見込み客・既契約者・紹介客を自分のリストとして一元管理し、関係を保ち続けることです。これは特別な才能の話ではなく、仕組みと習慣の話です。具体的な集客手段の選び方は保険営業の集客ガイドで解説しています。
Q. 改正保険業法2026は、この問題にどう関係しますか?
2026年6月1日施行の改正保険業法では、金融庁の公表によれば保険会社等による過度な便宜供与の禁止などが措置されます。これに伴い、保険会社による代理店向けのセミナー協賛や顧客紹介などの支援も、業界全体で縮小・停止が進んでいます。つまり『会社が連れてきてくれる集客』が細るということです。これまで以上に、募集人が自分で見込み客を創り続ける力が問われる時代になります。売れない原因を能力のせいにせず、仕組みで補うことの重要性が高まっています。
春野高利
AUTHOR / 本記事の執筆者
春野 高利(はるの・たかとし)
株式会社デザートブルーム 代表取締役 / Llinks(エルリンクス)開発者
保険業界実務経験25年以上。26歳でソニー生命に入社後、保険代理店経営を経て株式会社デザートブルームを創業。自身も「売れない募集人」だった経験から、見込み客を自分で創り続けるマーケティングの重要性を発信。改正保険業法2026を見据え、募集人が自力で見込み客を獲得・育成する「自走型営業」基盤の設計・導入を支援している。
→ プロフィール・経歴・主な発信の詳細
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